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<<   作成日時 : 2009/04/12 07:45   >>

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私ゴンチャローフは、
日本の対応の緩慢さに業をにやして、
いったん上海にもどりましたが、
ひと月半ほどしてふたたび長崎に帰ってまいりました。

そして、ようやく幕府全権団と
交渉の場につくことができたのです。

私たちはそこで、
気品に満ちた優秀な日本人に出会うことができたのです。

人間の知性や品格は、
時と場所を越えて存在していることを知りました。

********************

「○○○○○○○のためのエチュード」

連載55回

(『ゴンチャローフ日本渡航記』イワン・A・ゴンチャローフ
  ロシア秘書官・作家
  1853年〜1854年滞日)

「老全権が口を切った。
 私たちはじっと彼の目を見つめていた。
 老人は最初から私たちを魅了してしまった。

 こういう老人はどこへ行っても、
 どんな民族の中にもいるものである。
 両目と唇の回りは光線のような皺に囲まれ、
 まなざしにも、声にも、すべてに長老らしい分別のある
 愛想のよい善良さが輝いていた。
 それは長い人生と実生活の叡智のたまものである。

 誰しもこの好々爺を見れば、
 自分のおじいさんにしたくなるであろう。
 おまけに、
 この老人の物腰には立派な教養がにじみ出ているのだ。

 彼は語り始めた。
 だが、唇と舌はもはや力を失っていた。
 彼はゆったりと話した、
 その語り口はまるで瓶から瓶へ液体を
 静かに淡々と注ぎ移す風情であった」

「それにしても、
 彼らは何とまあ惚れ惚れする品物を届けて来たことか!
 ある全権〔筒井〕は黒い漆塗りの手文庫に、
 寺院や、四阿や、山や、樹木を金で浮彫りにした品を贈って来た。
 漆は無類に濃く、その黒色は何十年へても剥げ落ちることはなく、
 鏡のようにきれいである。

 これはどの漆器は、どこへ行ってもあるものではない」

「だが、品位の点でも、また価値からいっても、
 もっともすばらしい貴重な贈物は太刀であつた。
 刀剣の贈与は、日本人にとって疑うべからざる友情の表現である。

 日本刀の刀身は議論の余地なく世界最高のものである」

「日本もまた、
 外国人の前に門戸を開放すべく運命づけられているとすれば、
 それはさらに緩慢に行なわれるであろう。
 ただし戦争に訴えて日本にそれを強制することになるかもしれない。

 だが、そうした点で、
 日本はシナよりもはるかに巨大な優越性をもっている。
 もしも日本が、
 ヨーロッパ人から軍事技術を借用して港湾を強化すれば、
 どんな侵入があろうと安全である。

 日本を亡ぼし得るものは裏切りだけである。
 つまり、何者かが日本の内乱に火を点じて、
 封建領主たちを首都に対して造反させることに成功すれば、
 その時こそ日本は危機に瀬するであろう」

「この川路を、私たちはみな気に入っていた。
 筒井老人ほどではなくても、少なくとも筒井とは違った意味で、
 同じように好きであった。

 川路は非常に聡明であった。
 彼は私たち自身を反駁する巧妙な弁論をもって知性を閃めかせたものの、
 なおこの人物を尊敬しないわけにはいかなかった。

 彼の一言一句、一瞥、それに物腰までが、
 すべて良識と、機知と、炯眼と、練達を顕わしていた。

 叡知はどこへ行っても同じことである。
 民族、衣装、言語、宗教を異にし、人生観まで違うにせよ、
 聡明な人々には、すべての愚者にもあるように、共通した特徴がある。

 私は、川路が人に話しかけられたとき、
 立派な扇子をついて、
 じつと視線を凝らして聴き入る態度が気に入っていた。
 話の中ほどまで、彼の口は半ば開かれ、
 まなざしはやや物思いにふけるーー注意を集中した兆である。
 額にうつろう微かな皺の動きには、彼の頭の中につぎつぎに思考が集り、
 やがて話された内容の全体の意味がまとまってゆく過程が
 歴然と現われていた。

 話の半ばを過ぎて、その真意を掴んだと看て取ると、
 彼の口は固く結ばれ、額の皺は消え、顔全体が晴々する。

 彼はもう何と答えるべきかを心得ているのだ。
 もし反意の質問の中に言外の意味が隠されていると、
 川路は心ならずも微笑を洩らすのであった。

 彼が自分から話し始めると、満々と述べ、思考の化身となる。
 すると彼の眼光は爛々と輝くのであった」

*******************

幕末の幕閣のなかにも
これほど優秀な人たちがいたのだと
感慨をおぼえます。

きょうはここまで

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