etude107

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驚きました。

なぜって、
『ペルリ提督 日本遠征記』の序論第二項に
日本語の起源が論じられているのですが、
そこには
かの名著『日本語が亡びるとき』とほとんど同じ内容が
書かれているのです。

引用しながら論じてみましょう。

「支那の官話は、支那に於てのみならず、
 朝鮮、東京及びその他の地方に於ても、日本に於ても、
 教養ある人々間の一種の世界語、
 即ち高き教養ある人々によつて理解される
 極東に於ける一種のラテン語であることも亦眞實である」
(『ペルリ提督 日本遠征記』)

「日本は科挙制度から自由であったがゆえに、
 二重言語者の男たち、しかもことに頭脳明噺な男たちが、
 漢文の優秀な使い手となるための
 熾烈な競い合いをくりひろげる必要ーー
 漢文の(図書館)に
 ことごとく吸いこまれてしまう必要がなかったからである。
 日本の二重言語者の男たちは
 (普遍語)で読み書きしながらも、
 自然に(現地語)でも読み書きするようになった。
 そのことがいかに(現地語)の日本語を
 助けたことであろうか」
(『日本語が亡びるとき』)

また

「たとえば、ヨーロッパでは、教会の権威のもとで、
 ラテン語という(普遍語)の(図書館)に、
 二重言語者の読書人が、
 一千年にわたって吸いこまれていたのである。
 まさに、科挙制度のもとで、
 みなが漢文という(普遍語)の(図書館)に
 吸いこまれていたのと同じである」
(『日本語が亡びるとき』)

ペルリの<世界語>は
水村の<普遍語>と
同じ意味でもちいられています。

また、
ペルリの<世界語><国語><普通語>は、
水村の<普遍語><現地語><国語>に
ほとんど対応しているように見えるのです。

それを引用してみましょう。

「従つて、日本人には、三つの話法がある。
 第一は音読みを混ふることなき、純粋な訓読みである。
 これは同国本来の国語であつて、今日では、
 詩及び通俗文学の作品に使用されてゐる。

 第二は純粋な音読であつて、仏僧がその宗教書に使用してゐる。

 第三は、右二つの混じり合つたもので、
 同帝国の普通語をなしてゐる。」
(『ペルリ提督 日本遠征記』)

「そのおかげで、日本語は(普遍語)の高みに近づき、
 美的な重荷を負うだけでなく、時には、
 (普遍語)と同じように、
 知的、倫理的な重荷も負うのが可能な言葉に
 なっていったのであった。
 たとえば、(現地語)を象徴するひらがな文」
(『日本語が亡びるとき』)

また

「(現地語)でしかなかった日本の言葉が、
 明治維新のあと、
 かくもはやばやと(国語)として成立しえたのほ、
 ベネディクト・アンダーソソがいう「印刷資本主義」が
 江戸時代にすでに発達していたおかげであった」
(『日本語が亡びるとき』)

水村はまさに『ペルリ提督 日本遠征記』から
着想を得たかのように感じられます。

しかし150年前のアメリカで
これほどまで日本語の核心について
考察を深めていたことに驚きを禁じえません。

『米欧回覧実記』の久米でさえ
たとえばフランス語とラテン語の関係について
ここまでその本質をついた論を
展開することはありませんでした。

嘉永年間に、
米国の神学博士、法学博士である
フランシス・エル・ホークスによって編纂されたこの書は、
その秀でた碩学によって
日本文化の核心を明らかにしたのです。

これから読みすすむのが
とても楽しみです。

きょうは序論第三項の「政府」から
引用しましょう。

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『ペルリ提督 日本遠征記』(一)エム・シー・ペルリ

支那諸海湾及び日本への合衆国遠征隊司令長官
1853年、1854年、日本に来航。

「日本は、
 同時に二人の皇帝を有するといふ奇異なる特質を有してゐる。
 御一人は世俗的な皇帝であり、
 他の御一人は宗教的な皇帝である」

「殆どあらゆる著述家は、彼等の振舞が天性わだかまりなく、
 普通の話題について語り合ふときは打ち解けて腹蔵なく、
 又甚だ高い名誉心を有することを記述してゐる。

 彼等は甚だ慧敏にして快活な精紳の人民であり、
 その歴史に示されてゐるやうな敏捷さ、偉大な勇敢さを有し、
 他の如何なる東方文明国民よりも遙に勝れてゐる
 (少くとも吾々の意見では)」

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きょうはここまで。

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  • 水村美苗著「日本語が亡びるとき」はトンデモ本である。

    Excerpt: あるいは「俺の超亀レスが火を噴くぜ!」あるいは「英語はメタ言語ではない!」チンピラ物書きの三上憲一が、チョー上から目線で壮絶な覚悟で水村美苗に思いっきり絡んでみたよ!一読夜露死苦! Weblog: 蛇の卵 racked: 2009-08-02 11:04