『蒼天のクオリア』抜萃

『蒼天のクオリア』(2004年・抜萃) 沢村は喫茶店の窓を見た。 うすく黄に染まりはじめたポプラの葉が、風にゆれている。 初秋の透明な風だった。 沢村は、樹を見るというより空間をみていた。 ちょうどマシュマロの味を舌が愉しむように、枝葉のひろがりを視て、自分の空間認識能力を眼が楽しんでいたのだ。 そのうち…
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神と愛

神と愛 私は神の存在を否定する者でも、肯定する者でもありません 私の胸に疼く愛の存在を、恋人に証明することが不可能なように あざやかに神を見る者も、その神の存在を他者に証明することは不可能であると 理解しています なんだか、最初からワケワカメかもしれません それでは、恋人たちの痴話げんかを考えてみてください …
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巌頭之感

8月1日(土)10:30~12:00 SBS学苑パルシェ校(7階) 演題 冑佛信仰の宗教的基礎-戦国武将の精神世界- 「無料チケット&資料プリント」まだ少し残っています ご希望の方はメッセージでお申し込み下さい 巌頭之感 人生の浮沈に心ゆれるとき しらず口ずさむ言葉があります ] 曰く不可解 この一節…
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中村名誉教授からの手紙2

中村名誉教授からの手紙2 北大の中村義男名誉教授から送られてきたのは 何だったのか。 日本経済新聞に私の記事が掲載されたのは 平成16年11月17日でしたから、 それからちょうどひと月ほどたって それは送られてきたのです。 先生のお葉書の返礼に 拙著『蒼天のクオリア』を同封したことは 昨日記しました…
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中村義男名誉教授からの手紙1

十数年まえのこと その絵葉書は封筒に入って送られてきました 裏返すと、差出人は北大の中村義男名誉教授でした 日付は平成16年11月17日になっていて ちょうどそれは 私の文章が 日本経済新聞文化欄に 八段抜きの記事として掲載されたその日でした 「兜に秘める伝説の小仏」 と題された日経の記事を読んで …
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フェルメール展

フェルメール展 東京でフェルメール展をみたときのこと 早朝でしたから100人ほどの列ですみました お目当てのフェルメールだけを集中してみることにしました ヘッドフォーンの解説を聞きながら 解説が消えてもじっと見つづけました ヘッドフォーンのおかげで 会場の雑踏が遠のいて やがて全身が静謐に…
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流水(『五輪書』)

流水(『五輪書』) 日本の文化と伝統を守るという基軸は 揺るがせてはならないと考えます しかし守るとは 刻々と変容することでもあります 一見矛盾しているように思われるかもしれません 我が家の家訓のひとつに 「代々初代」というものがございます 守るとは 頑なに形骸を固守することではなく …
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「純粋」ということ

「純粋」ということ 日本文化の核心は何かと考えるうちに 青春に回帰しました それは「純粋」ということ 20才のとき それははじめて書いた小説らしきものの 主題にした言葉です 私の処女作『翼』から引用します ******************** あの澄みきった「純粋」の曙光を、突如とし…
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考えるひと

考えるひと フィールズ賞を受賞した広中平祐は「数式を解くとき、それは音楽のように頭のなかをながれる」といいました 考えて式を解くのではなく、いくつもの解法が協奏曲のように頭のなかをながれるというのです ずいぶんむかしに読んだ本に、岡潔の同じような言葉がありました 岡潔も広中とおなじ数学者で、それは著作ではなく対談…
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考えることと書くことと

考えることと書くことと 考えていることは 書かないようにしてきました 「論理は最低の真理である」 と若いときに思いこんでしまったから 理屈をこねるのはみっともないこと とずっと思っていたのです たとえば 「人間が歴史から学んだことは、  歴史から何も学んでないということだ」 というようなレトリックは …
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シャガールはなぜ驢馬を描く

シャガールはなぜ驢馬を描く シャガール展でのこと Quay of Bercy(Le Quay de Bercy) と題された絵のまえで立ち止まり 後ろのソファーに座ってながめているうちに 眠ってしまいました 青い驢馬の夢をみたのです 目ざめたとき それは絵の右上に描かれた驢馬なのだとわかりました …
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April Fool 2007 告白

告白 昨年の秋、裏庭の池の底で、 大きな蝦蟇蛙が、三匹あおむけになって死んでいました。 それからというもの、裏の池は死の池になってしまいました。 それから二週間ほどして池の底を見ると、 ちいさな、それは水面に目をちかづけなければ見えないほど ちいさな生き物がいっぱいうごめいていました。 エビのようなもの、魚…
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小説家に色を見る

小説家に色を見る 小説家それぞれに色がみえる なぜだろう ドストエフスキーや、中島敦や、すべての作家に色がみえる 新潮文庫の表紙の色が反映しているのだろうか(笑) しかし、作家それぞれの色とはべつに 優れた作品には特有の色がある 私はその色を、「濃藍」と表現した それは宇宙の色 深い…
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眠りからさめるときに

眠りからさめるときに 怖ろしい真実に気づきました それはこんなことです キリストは私たちに 神はいないことを教えたのだ それゆえに 神はいるのだと云うことを 「我が神、我が神、なんぞ我を見棄て給いし」 イエスが叫んだとき エリアは来ず、彼は神の非存在を知りました それゆえに彼は罪人に言うのです …
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レイモン・ラディゲになれなかった

レイモン・ラディゲになれなかった 「ぼくはもう二十歳なんです。  それなのにひとつも名作が書けなかった」 ぼくはそういって声を上げて泣きました 教授は目を丸くして 「そうか」 と言って、うつむいてしまいました 二十歳のぼくはランボーやラディゲと競うつもりで いたのです(笑) …
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野球場

わたしの家のまえに、野球場とよばれる土地があります。 いまは造成されてすこし小高くなっていますが、昭和三十年代の水害以前は、県道とおなじ高さのもっとひろい土地でした。 水害のときのことはまた日記に書くとして、きょうは野球場とよばれる土地についてお話しします。 現在のその土地は、ま四角に造成された荒れはてた雑種地にすぎませんが、…
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